日本の年金を受け取りながらポルトガルに住む:税金と手続き(2026年)
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日本とポルトガルの間には租税条約があり、2013年7月28日に発効しています。条約第17条により、ポルトガルの居住者に支払われる退職年金は、原則としてポルトガルでのみ課税されます。日本年金機構は、老齢年金を受けている方が租税条約の締結国に住む場合、「租税条約に関する届出書(様式9)」を提出すれば日本で源泉徴収される所得税が免除されると案内しており、その国の一覧にポルトガルも載っています。ポルトガルでは、居住者は国外で得た所得も含めて課税されます。ポルトガルに移住した人向けの旧優遇税制である非常居住者(NHR)制度は、すでに新規の受付を終えており、後継のIFICIは外国の年金を優遇の対象にしていません。日本とポルトガルの間に社会保障協定はありません。
この記事は一般的な情報です。Urbanisは税務の助言は行いません。ご自身の年金の扱いは、日本とポルトガルの税理士に確認してください。
日本とポルトガルの租税条約
正式名称は「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約」です。2011年12月19日にリスボンで署名され、財務省の租税条約一覧では発効日が2013年7月28日となっています。ポルトガル税務当局(AT)の条約一覧も同じ日付を示しています。
条約第28条により、源泉徴収される日本の税については、発効した年の翌年、つまり2014年1月1日以後に課される額から適用されています。条約の正文は日本語、ポルトガル語、英語の3つで、日本語の本文は財務省のサイトで読めます。
第17条と第18条:年金はどちらの国で課税されるか
第17条(退職年金)は次のとおりです。
「次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。」
ポルトガルに住み、ポルトガルの税務上の居住者になれば、この条文の「一方の締約国」はポルトガルです。
例外が第18条2(政府職員)です。国や地方公共団体に提供した役務について、国や地方公共団体、またはそれらが拠出・設立した基金から支払われる退職年金は、支払う側の国でのみ課税されます。ただし、受け取る人が相手国の居住者で、かつ相手国の国民である場合は、相手国でのみ課税されます。日本の元公務員の方がポルトガルに住む場合、ポルトガル国籍も持っていない限り、この部分の年金は日本で課税される、というのが条文の内容です。
国民年金や厚生年金の老齢年金が第17条と第18条2のどちらに当たるのかを、日本年金機構と国税庁の公開ページは明示していません。日本年金機構が案内しているのは、老齢年金で、相手国と年金に関する租税条約がある場合に、届出書によって非居住者の所得税が免除されるという点です。国税庁の届出書には「適用を受ける租税条約の条項」を書く欄があります。公務員として働いた期間がある方や、企業年金を受けている方は、どの条項を書くか、提出前に税理士に確認してください。
日本側の手続き:源泉徴収を止める
日本を出て非居住者になると、日本の年金には非居住者としての所得税がかかります。日本年金機構の案内では、ポルトガルに住んで日本の年金を受け取る方は、次の書類を出します。
- 「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」。提出期限は「年金支払日の前々月末日」です。
- 「租税条約に関する届出書(様式9)」を2部。アメリカ合衆国以外の条約締結国に住む場合の書類で、アメリカに住む場合だけ「特典条項に関する付表(様式17-米)」と居住者証明書が加わります。
日本年金機構の「租税条約等締結国一覧(令和7年1月現在)」は、届出書を出すことで年金から源泉徴収される所得税が免除される国として、ポルトガルを挙げています。カナダ、タイ、スウェーデン、マカオのように、条約があっても年金条項がないなどの理由で適用されない国や地域もあるので、国ごとに確認が必要です。
国税庁によると、届出書は年金の支払者ごとに作り、最初に支払を受ける日の前日までに、支払者を通じて税務署に提出します。日本の年金では、支払者は日本年金機構です。間に合わなかった場合は国内法の税率で源泉徴収されますが、後から「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」で差額の還付を請求できます。日本年金機構は、最新の様式は国税庁のサイトで確認するよう案内しています。
日本年金機構は、前年に海外に住んでいた老齢年金の受給者に、支払った年金額と源泉徴収税額を記載した「非居住者等に支払われた給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を毎年1月末に送ります。ポルトガルでの税務申告に使えます。
日本の年金をポルトガルで受け取る
受取口座は、日本の金融機関の口座でも、ポルトガルの金融機関の口座でもかまいません。日本の口座を指定する場合、ゆうちょ銀行は使えません。ポルトガルの口座を指定する場合は、SWIFT(BIC)コードとIBANが必要で、口座証明や通帳のコピーなどを添付します。日本年金機構の国別送金通貨一覧では、ポルトガルへの送金通貨はユーロです。通貨を個別に選ぶことはできません。受取先を変えた後の最初の振込には、3週間から4週間かかる場合があります。
海外に住む受給者は、年1回「現況届」を出します。期限は誕生月の末日で、現況届は誕生月の3か月前に送られてきます。日本国籍の方は、住んでいる国の日本領事館等が発行する「在留証明」を添付します。証明日は誕生月を含めて過去6か月以内のものが有効です。マイナンバーカードがあれば、e-Gov電子申請でも提出できます。
ポルトガル側の課税
ポルトガルのIRS(個人所得税)法第16条では、1年のうち183日を超えてポルトガルに滞在した人や、滞在がそれより短くても、居住を続ける意思がうかがえる住まいを持っている人が居住者になります。第15条により、居住者は「国外で得た所得を含むすべての所得」に課税されます。年金は第11条のカテゴリーH(年金所得)で、他の所得と合わせて第68条の累進税率で課税されます。申告は前年分を翌年の4月1日から6月30日に行います(第60条)。
外国の年金を優遇していた非常居住者(NHR)制度は、2024年度国家予算法(法律第82/2023号)で終わりました。同法第236条第3項の経過規定で旧制度が使えるのは、すでにNHRに登録されていた人、2023年12月31日の時点ですでにポルトガルの居住者だった人、2024年12月31日までに居住者となり、同条が定める期日までに結んだ雇用契約や賃貸契約などを持っていた人と、それぞれの世帯員に限られます。ポルトガル税務当局はIRS法第81条の注記でこの点を説明しています。いま移住する方は対象になりません。
後継のIFICI(科学研究・イノベーション税制優遇、税制優遇法第58条のA)は、大学での教育や研究、認定された高度専門職などの活動をする人の制度です。20%の特別税率がかかるのはカテゴリーAとB(給与と事業所得)で、国外所得の免除もカテゴリーA、B、E、F、Gに限られ、年金のカテゴリーHは含まれません(IRS法第81条第4項)。詳しくはNHRに代わる制度IFICIの記事(英語)をご覧ください。
ポルトガルに住宅も持つ場合、年金とは別に毎年IMI(固定資産税)などがかかります。海外に住みながらポルトガルの住宅を持つ:2026年に毎年かかる税金もあわせてご覧ください。
社会保障協定はありません
社会保障協定は、保険料の二重負担を防ぎ、両国の年金加入期間を通算するための協定です。日本年金機構の一覧では、日本は2025年12月1日のオーストリアとの協定発効で24か国と協定を結んでいますが、ポルトガルは含まれていません。そのため、ポルトガルで年金制度に加入した期間を日本の加入期間と通算することはできません。
日本国籍の方は、海外に住んでいても国民年金に任意加入できます。任意加入して保険料を納めた期間は、老齢基礎年金の額に反映されます。これから出国する方はお住まいの市区町村の窓口で手続きします。
ビザと国籍
年金で暮らす方の多くは、年金などの継続的な収入がある人向けのD7ビザを検討します。条件と必要な収入額はポルトガルのD7ビザとD8ビザ 2026年版:どちらが合うかにまとめています。
ポルトガル国籍の取得を考える場合は注意が必要です。法務省は「自分の意思で外国国籍を取得した場合、例えば、外国に帰化をした場合等には、自動的に日本国籍を失います」と説明しています。多くの日本人にとって現実的な目標は永住許可です。違いは2026年のポルトガル:永住許可と国籍取得の違いで説明しています。
移住前と移住後の手順
移住前
- 受け取っている年金の種類を確認します。老齢年金か、公務員としての勤務に基づく部分があるか、企業年金があるかで、条約の扱いが変わることがあります。
- 日本とポルトガルの税理士に、どの条項が適用されるかを確認します。
- 1億円以上の有価証券等を持っている場合は、国税庁の国外転出時課税の対象になるかを確認します。原則として、出国前10年以内に日本に住所や居所があった期間が5年を超える人が対象です。
- 国民年金に任意加入するかを決め、加入するなら市区町村の窓口で手続きします。
- 年金の受取口座を日本の口座にするか、ポルトガルの口座にするかを決めます。
- ビザ(多くの場合D7)を申請します。
移住後
- 「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」を、年金支払日の前々月末日までに日本年金機構に出します。
- 「租税条約に関する届出書(様式9)」2部を、住所・受取金融機関の届と一緒に、年金支払日の前々月末日までに日本年金機構に出します。日本年金機構が、最初の支払日の前日までに税務署へ提出します。遅れた場合は様式11で還付を請求します。
- ポルトガルの税務上の居住者になった日を確認します(IRS法第16条)。
- 毎年1月末に届く支払調書を保管し、4月1日から6月30日にポルトガルでIRSを申告します。
- 毎年、誕生月の末日までに現況届と在留証明を日本年金機構に出します。
Urbanisがすること
Urbanisはポルトにある認可を受けた不動産会社です(AMI 24596)。ポルトでの賃貸物件や購入物件の住まい探しと、移住の手配をお手伝いし、税務については独立した税理士をご紹介します。当社は税務の助言は行いません。チームはポルトガル語、英語、スペイン語、ヘブライ語で対応しており、お問い合わせへの返信は英語でお送りします。移住チームに相談する(英語)。
よくある質問
日本とポルトガルの間に租税条約はありますか?
あります。2011年12月19日にリスボンで署名され、2013年7月28日に発効しました。日本の源泉徴収税については2014年1月1日以後に課される額から適用されています。
日本の年金は日本とポルトガルの両方で課税されますか?
条約第17条では、ポルトガルの居住者に支払われる退職年金は、ポルトガルでのみ課税されます。例外は第18条2で、国や地方公共団体への役務に基づく年金は、原則として支払う側の国、つまり日本で課税されます。ご自身の年金がどちらに当たるかは税理士に確認してください。
日本での源泉徴収を止めるにはどうすればよいですか?
老齢年金を受けている方は、「租税条約に関する届出書(様式9)」を2部、住所・受取金融機関の届と一緒に、年金支払日の前々月末日までに日本年金機構に提出します。日本年金機構が最初の支払日の前日までに税務署へ提出します。間に合わずに源泉徴収された分は様式11で還付を請求できます。
出典:日本年金機構「年金を受けている方が海外に居住するとき」
NHRやIFICIで年金の税金は軽くなりますか?
いま移住する方には、なりません。NHRは経過規定の対象者を除いて終わっており、IFICIの国外所得の免除は年金(カテゴリーH)を含みません。ポルトガルの居住者として、年金は通常の累進税率で課税されます。
出典:ポルトガル税務当局 IRS法第81条(法律第82/2023号第236条を含む)
日本とポルトガルの間に社会保障協定はありますか?
ありません。日本年金機構の一覧にある24か国にポルトガルは含まれておらず、両国の年金加入期間を通算することはできません。
日本の年金を受け取りながらポルトへの移住を考えている方には、住まい探しと移住の手配をお手伝いし、税務については独立した税理士をご紹介します。お問い合わせへの返信は英語でお送りします。
Urbanisのチームに問い合わせる出典(2026年10月29日に確認):
- 財務省「我が国の租税条約等の一覧」
- 財務省「日本国とポルトガル共和国との間の条約」和文(PDF)
- Diário da República、国会決議第50/2012号(条約のポルトガル語・英語正文、PDF)
- ポルトガル税務当局「Tabela CDT 2026」(PDF)
- 日本年金機構「年金を受けている方が海外に居住するとき」
- 日本年金機構「租税条約等締結国一覧(令和7年1月現在)」(PDF)
- 日本年金機構「海外で年金を受け取るとき」(様式)
- 日本年金機構「海外にお住まいの年金を受けている方が年金を受け取る金融機関を届出するとき」
- 日本年金機構「国別送金通貨一覧」(PDF)
- 日本年金機構「海外にお住まいの年金を受けている方が誕生月を迎えたとき」
- 日本年金機構「社会保障協定」
- 日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き」
- 国税庁「A3-12 租税条約に関する届出(退職年金・保険年金に対する所得税及び復興特別所得税の免除)」
- 国税庁「租税条約に関する届出書(退職年金・保険年金等)に関する注意事項」(PDF)
- 国税庁 タックスアンサー No.2888 租税条約に関する届出書の提出
- 国税庁 タックスアンサー No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
- 法務省「国籍Q&A」
- ポルトガル税務当局 IRS法第11条、第15条、第16条、第60条、第68条、第81条
- ポルトガル税務当局 税制優遇法第58条のA(IFICI)
この記事は一般的な情報であり、法律や税務に関する助言ではありません。最終確認日:2026年10月29日。